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第 百七十六 斬.「日本再生のためTPPに果敢に挑め!」
          〜農業再生策の具体化と事前交渉での情報収集を急げ!

                                                H23.12.05
 
◆ 11月13日、ハワイでのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議で、野田首相 は「TPP(環太平洋連携協定)交渉への参加に向けて関係国との協議に入る」方針を表明 した。    ⇒ TPP
 そして、そこで採択された 「ホノルル宣言」 ではアジア太平洋全域を自由貿易圏とする ための協力推進を掲げた。
 
 APECは、域内の関税や規制を撤廃するFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)を目指 しているが、日本は この前段階として2020年構築をメドに、ASEAN(東南アジア諸国 連合)に日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの6ヶ国を加えた 枠組み(ASEANプラス6)を提唱している。
 
 一方TPPはアメリカが中国に対抗して、アジア太平洋の経済連携で主導権を握ること を狙っているものである。
 アメリカの戦略は、TPPを足掛かりにして関税ゼロなどの自由貿易圏をAPECにも 広げて、経済連携を強めて共通ルールで地域の秩序維持・発展を実現することで、対中国 抑止力としての効果を発揮させて、いずれは13億人の巨大市場である中国をも引き込もう というものだ。
 
 そのため、日本のTPP交渉参加に対する中国の警戒心は強くて、中国の温家宝首相は ハワイでの野田首相との首脳会談で、日中間の戦略的互恵関係の深化を確認した。
 さらに 11月19日、野田首相・温家宝首相・韓国の李明博大統領がインドネシアのバリ で会談し、日中韓のFTA(自由貿易協定)の早期交渉入りを目指すことで合意した。
 また3ヶ国の投資協定交渉を年内に実質妥結させる方針も確認した。
 
 このように、これまで日中韓FTAに及び腰だった中国が積極姿勢に転じたのは、アメ リカ主導のTPPに対抗する狙いがあるからだろうと見られている。
 
 さらにハワイでの日本のTPP参加意向表明に刺激されて、カナダとメキシコもTPP 交渉参加を打ち出し、フィリピンとパプアニューギニアも参加意欲を示したため、TPP の規模は一気に拡大し太平洋を取り巻く巨大な経済圏が生まれる可能性が出てきた。
 
 もちろん、関係国が多くなるほど協定交渉はより複雑になり、乗り越えるべきハードル が高まるのは確かなので、今後、日本の外交力がどう発揮されるか試されることになる。
 日本は、TPPを軸に据えて、日中韓FTAの実現や、ASEANとの連携強化も図る べきであろう。
 こうすることで、TPP交渉でのアメリカの強硬姿勢をけん制する外交的効果も期待で きるのは間違いないだろう。
 
 TPP問題は本来、経済案件なのだが、同時に日米同盟の絆を懸けた政治・安全保障の 案件となっている。
 外務省は「オバマ政権には、日本がTPPと牛肉の輸入で決断すれば普天間問題が片付 かなくても良しとする空気がある」と認識しているそうだ。(11月21日 毎日新聞)
 つまりアメリカは同盟関係にある日本に対して、アメリカのアジア戦略にどう協力する か強硬姿勢で迫る、という図式になると言うのだ。
 
 そして日本がTPPに参加するには現メンンバー9ヶ国と事前交渉して同意を取りつけ ねばならないため、早速、アメリカのカーク通商代表部代表は、BSE(牛海綿状脳症)に 感染したアメリカ産牛肉の流入を防ぐ日本の輸入制限撤廃や、自動車の市場開放、日本郵 政への優遇措置見直しを迫る圧力をかけてきているのだ。
 さらにハワイでの日米首脳会談では、オバマ大統領が牛肉問題で「科学的知見に基づい て解決を」と野田首相に迫った。
 
「TPPは貿易という名を借りた経済侵略、戦争という手段を使わずアメリカが世界侵略 するためのもの」と反対論者は喧伝(けんでん)しているが、それは事実であろう。
 
 TPPによる日本への経済効果については昨年10月、経済産業省と農林水産省が試算を 示した。
 経産省版はTPP参加を見送る場合の試算で、2020年にGDP(国内総生産)が 1.53% (10.5兆円)減少し、81.2万人の雇用が失われると分析。
 農水省版はTPP参加の場合の試算で、輸入品の大量流入により農業生産額は年4.1兆円 減少し、実質GDPは 1.6%(7.9兆円)減少し、340万人が職を失うとしている。
 このように、輸出拡大効果を大きく見積もる経産省版と、国内農業への打撃を深刻視す る農水省版の両試算で結果が大きく異なり、試算への信頼性は疑問視された。
 
 TPPに関して問題となっているのは、
  1. 例外なしの関税ゼロが原則
  2. モノに加え、金融・医療など21分野が対象
と従来の貿易交渉と異なり、幅広い分野での例外無き自由化が前提となっていることだ。
 従ってTPPに参加すれば、「医療・国民皆保険などの制度が根幹から揺らぐ」 との反対 論者からの懸念が示されている。
 
 しかしTPPには、例えば知的財産権保護のように これまで日本が大きな損害を被って きた分野が、TPPで守られることにより莫大な利益を得られるものになるという大きな プラス面があるのは確かだ。
 
 このようにTPP参加には当然、利害両面がある。その両者の比較の中で、どう決着さ せるかを検討するのが“交渉”である。
 確かに 「民主党政権に国益を守る交渉が出来るのか? アメリカにしてやられるのでは」 の懸念はある。
 だが交渉する前から“敗北”を懸念するが故の「TPP参加に反対」の論は情けない話だ。
 
 与党でありながら公然とTPP参加に反対の民主党内の慎重派と称される議員たちは、 現民主党政権には“交渉”能力は無いと確信しているようで、あきれてしまう。
 もっとも、彼らの多くは単に、農業団体と関係業界の選挙票を期待している面々と見受 けられるが・・・
 
 自民党・谷垣総裁は 「TPP参加表明は拙速。参院の問責決議も視野に追及する」とまで 言及した。
 そしてTPP賛成派の小泉進次郎衆院議員の造反を恐れて、議院運営委員会の委員から 外して賛成論を封じ込めるなど、対決一辺倒でTPPを“政争の具”にしているようだ。
 このような 「TPP参加絶対反対」 を叫ぶ農業団体と関係業界との連携を強める自民党 の姿勢は、アジア太平洋全域を自由貿易圏へ推進すると掲げたAPECの「ホノルル宣言」 を否定し、自由貿易拡大や日米同盟の堅持・深化を阻害しているとしか思えない。
 この党でも、執行部は国益よりも選挙での票目当ての愚かな判断をしているのだろう。
 さすがに石破茂・前政調会長は、「首相が交渉に参加すると表明した以上、我党が離脱と 言ったら日米関係はもたない。我党が政府に政策を要求すべきだ」と主張しているが
・・
 
 公明党の斉藤幹事長代行は「大きな流れとしては、日本が生き残っていく上で進めるべ きという認識はある」と、与党との協議に公明党は応じる真っ当な方針を示している。
 
 貿易立国として発展し経済大国の地位を築いてきた日本は、現状の沈滞状態を打破して 経済の再生を果たし生き残っていくためには、今後さらに自由貿易を拡大していくことは “必須条件”であると考える。
 APEC終了後、野田首相はTPP交渉参加について「十分な国民的議論を経て国益に 沿い結論を得る」と述べ、「アジア太平洋の活力をわが国の再生に取り込む」と強調した。
 
 TPP参加には、“問題児”である農業の体質強化が欠かせないことは明らかである。
 輸入品が増加しても食糧自給率を高められる方策を構築するためにも、そして慎重派の 議員を説得するためにも、政府がまとめた農業再生策の具体化を急がねばならない。
  ⇒ 政府がまとめた農業再生策
 そして、先ず野田政権と与党内が結束することだ。
 
 通商交渉は、「より自国に有利に働く貿易のルールを築く闘い」である。
 国益を守るためには、どんなルールにするのが良いのか、そのためにどんな働きかけを すべきか、国の命運を賭けて方針を定め、国益を守るために個別案件につき全力を挙げて 効果的方策を練る必要がある。
 
 これから手がけるのは、「TPP交渉参加に向けての関係国との協議」、つまり事前交渉 なので、関係国の考え方を情報収集することに集中せねばなるまい。
 そしてTPPの対象は様々な省にまたがるため、各省が緊密に連携し情報を共有できる 体制を作り上げることが重要と考える。
01-01




(始計)
兵は国の大事。 死生(しせい)の地、存亡の道なり。
察せざる()からず。
※戦争は国家の一大事であって、国民の生死、国家の存亡かかわるものなので、慎重に検討 しなければならない。
03-12




(謀攻)
(かれ)を知らずして(おのれ) を知れば一勝一負す。
彼を知らず己を知らざれば戦う毎に必ず敗す。
※敵の実情を知らなければ、我自身をわきまえても勝ったり負けたりの戦いにしかならない。
 敵情を知らないどころか我自身をもわきまえなければ、戦うたびに必ず敗れる。

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  TPPとは
 Trans-Pacific Partnership 環太平洋経済協定 
 2006年にApec参加国であるニュージランド、シンガポール、チリ、ブルネイの4ヶ国が発効させた 貿易自由化を目指す経済的枠組み。
 加盟国の間で取引される品目に対して、関税を原則ゼロにしようという枠組み。
 工業製品、農産物、金融サービスなどを始め、全品目について2015年をメドに関税全廃を実現す べく協議が行われている。
 2010年10月に開かれた「新成長戦略実現会議」で、当時の菅直人首相がTPPへの参加検討を表明した。
                                  (新語時事用語辞典)
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   
  政府が取りまとめた農業再生案(2011年10月20日発表)
1.競争力・体質強化 〜 攻めの担い手実現、農地集積
2.競争力・体質強化 〜 6次産業化・成長産業化、流通効率化
3.エネルギー生産への農山漁村の資源の活用を促進する
4.木材自給率50%を目指し、森林・林業再生プランを推進する
5.近代的・資源管理型で魅力的な水産業を構築する
6.震災に強い農林水産インフラを構築する
 
 「6次産業化」は、農産物の生産(1次産業)だけでなく、加工(2次産業)や販売(3次産業)までを 手がけて付加価値を高めようとするもので、1×2×3=6次産業 と称している。
 
 

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